エネルギーや質量の保存則が、運にまで適用されているのかは知らない。ただ、強烈に運のいい人間が存在するなら、それと同じだけ運の悪い人間も、どこかに存在しているんだとは思う。根拠のある理論ではなく、あくまで肌感として。
運というものを完全な偶然だと考えても、全員に均等に配られるとは限らない。偶然であるからこそ、異常なほど良い結果が連続する人間もいれば、本人にはどうしようもない悪い出来事が、何度も重なる人間も出てくる。長い時間と膨大な人数の中で見れば、幸運だけが一方的に増え続けるというより、どこかで同じ深さの不運も発生しているように見える。
一人の人生だけを見ていれば、「この人は運がいい」で話は終わる。しかし、視野を世界全体に広げると、同じ瞬間に、何の落ち度もない誰かが理不尽な目に遭っている。片方がもう駄目だと思ったところから偶然に救われ、もう片方は順調だったところから、偶然一つで全てを失う。
もちろん、両者の運が直接交換されたわけではない。ただ、世界全体に発生する幸運と不運には、どこか釣り合いのようなものがある気がする。運は平等に配られているのではなく、極端な濃淡をつけながら偏在している。その偏りの片側だけを見て、世界は幸福に向かっているとは、俺にはどうも思えない。





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